これ以上ないような天気、ベストなコースコンディション、素晴らしい大会運営、そして大人なチームメイト。三拍子も四拍子もそろったトレールウォーカーだった。こんな環境で二日間を過ごせたことがすごく幸せ。自分の健康、サーポートしてくれた方々、大会を主催運営してくれた方々に感謝するのみです。
5月13日朝9:00に小田原を出発して山道を延々と100Km歩いて(走る人もいる)最後は山中湖まで48時間以内に到着するチャリティーイベント。会社のチームで参加した。今年の参加チームは160余。参加者は650人以上。それにボランティアが各地に数百人。募金総額は数千万円。
小田原の城山競技場がスタート地点。行ってみると外人の多さが目立つ。そして金融系の外資からの参加が目につく。外人は2割くらいのイメージだが実際の値はわからない。
我々のチームはGirlsチームに私が混ぜてもらった混合チーム。
前夜までの雨がすっかりと上がって快晴、薫風の五月晴れになった。出発の時間になると前の方に陣取ったチームは一斉に走り始める。 トレイルウォーカーと言ってるがトレイルランニングをするチームもいくつかあり順位を争っている。ウォークとランの境界が決められないしそれを監視することもできないのでこうしてランするチームも当然でてくるだろうがあまり感心できない。順位を争うイベントではないと思っていた。いずれにしても、全チームはスタートしてトラックを二周してからトレールに入る。我々はゆっくりと歩いて進んだ。
CP1から2までは前回の試走(試歩)の記事にある。ここは全コースの中で一番気に入ったコースである。トレイルランにもってこいのコースでありいつか走ってみたい。この頃はまだチームの速度があまりかわらず多くのチームが前後に見えている。
前夜まで降り続いた雨によるコースコンディションが心配だったがこれは杞憂で、適度に湿った山道は柔らかく、滑らず、最高の状態だった。山道を歩き始めてほっと一安心した。新緑が目にまぶしい。
CP(CheckPoint)1は阿弥陀寺。各CPでチームの通過をチェックし食糧、飲料を提供する。各CPには、カップスープが3種類、ベーグルが二種類、バナナ、チョコレート、おにぎり、水、ポカリスエット、、、が置いてあり任意の補給食以外はここで調達できる。ただし、これ以外の品物、食料は別途サポート部隊を各チームが確保しておき各CPで補給を受けることはできる。これはチームによって大きく変わり我々は特別に食料の補給を受けるサポート隊は用意せず別の形でサポートしてもらった。中には主要なCPでキャンプして食事を用意するチームある。
CP2は箱根に下りて箱根ふぃらわーセンター。各CPではそれなりに大休止を取った。CP2からCP3の箱根恩賜公園までは舗装路を歩くことも多い。
CP3からCP4の芦ノ湖キャンプ村までは芦ノ湖の湖畔の小道をひたすら歩く。途中で暗くなったので各自ライトをつけた。ここで足を引きづって独りで歩いている参加者がいた。聞くと他のメンバーは先に進んでいるとか。これはルール違反。でも彼は一人で歩いていた。とりあえず痛み止めのアスピリンを提供した。後で調べてみるとこのチームは3人だけがゴールしたらしい。やっぱり彼は途中リタイヤしたのでしょう。
真っ暗になったCP4に到着。ここは主要なCPの一つで仮眠の場所もある。ストレッチサービスもある。夜になると冷え込んだ。我々はここに仮眠せずに近くのロッジに向かった。ここでサポートしてくれる職場の方が風呂を沸かし、食事を用意して待っていてくれた。ちょっと贅沢だがお金で体力を買った次第。一応これはルール内らしい。ただしCPを起点にすること。
サポーターの見送りを受けて二日目14日の早朝出発。
今日も快晴だ。CP4からCP5の途中に大雄山最乗寺までは明神ケ岳の登りがあるが特段に厳しくはない。途中で初めての富士山と遭遇。
そしてこんな不思議な岩もあった。
最乗寺は大きな山寺だ。杉の大木に囲まれた立派な寺。杉の林を通りぬけてくる皐月の風がなんともここちよい。ここにもCPが設けられて仮眠所等の面倒を見てくれる。どこのCPにもボランティアの老若男女が多く働いている。その一人一人が実に気持ち良く参加者を迎えてくれる。CPに入ってくると拍手で出迎えてくれ、出発するときも白書で送り出してくれる。励みになる。食料の提供をする人、参加者の通過時間を確認する人、コースの案内をする人、交通整理をする人、会場整備をする人、何十人ものボランティアが各CPでこの大会を支えてくれているわけだ。彼らは自治会の担当者だったり、地元婦人会だったり、学生だったり、いろいろだ。ただただ感謝する。
CP5からCP6の矢倉沢公民館まではなだらかないいハイキングコースだ。ここもランには楽しそう。この日の午後になって右ひざの後ろの筋肉が張ってきて痛むようになった。伸ばすと痛い。坂道を登り下りするときはサボ度痛みは感じないが平地を歩いているときは脚を伸ばす必要があるので痛む。消炎スプレーをかけたり、痛み止めのアスピリンを飲んだりしたがあまり効果なし。そのまま歩き続けた。矢倉沢公民館は会社のランニングサークルで足柄峠ランをした時に通りかかったところだ。この日も峠を駆け下りてくるランナーが何人かいた。この辺は北山茶で有名なところ。茶畑がきれいだ。このCPでも地元のご婦人が食料を提供していた。地元にとっては一台イベントらしく通しすがありの多くの人が声をかけてくる。
CP6からCP7のふじみセンターまでは600mほどの登りがあるがきれいな山道だ。新緑が美しい。このCPがある駿河小山町に下りてくると里に戻った気分になりこの後に続く険しいコースを考えると気持ちを盛り上げるのが大変なところだ。センターに着くころは薄暗くなり昼間の暖かさも消え冷え込んでくる。自宅での暖かい夕餉が恋しくなる。次への意欲をさらにかき消してしまう条件だ。このCPも主要なCPで次に控える大きな登りコースへ準備基地のような感じになっている。専門学校の生徒がスポーツストレッチをしてくれている。あまり期待してなかったがとりあえず受けてみた。都合4回受けてみた。初々しい学生が一所懸命に痛む足をストレッチしてくれた。 ここにはファーストエイドもあり看護師が傷の応急処置をしてくれる。
そう、ここは分岐点。ここまで80kmを歩いてきて各人が相当の疲労を感じている。里に下りてきたという感覚もあり次の難コースに行くか行かざるか、まさにハムレットの心境になるCPだ。ここで多くの参加者がリタイアする。リタイアしたチームはここでしばしビールを飲んで談笑していた。
制限時間一杯を使って歩く予定のチームはここを夜の11時までには出発しないと到着が難しくなる。そこで、ここで仮眠をとり、英気を養ってから夜間に出発するチームが多い。我々もその一つだ。
ストレッチをしてもらい、食事をしてから広い仮眠所で一時間ほど仮眠できた。夜10:30いよいよ出発。天気予報によると夜間の気温は4度。真冬並みだ。ライトを点けて出発。
CP7からCP8までは最後の難所。まず一気に700m位の登りで不老山に登る。実に急な登りだ。階段状になっていてロープも張ってある。このコースをいくつものチームがライトを点けて登っていく。風もなく実に静かな夜だ。月も満月に近く明るい。おかげて星が少ない。同じようなペースのチームだ。抜きつ抜けれつで進んでいった。
不老山を下った後で改めて湯船山の登りも険しい。暗くてよく見えないが道が細く切り立っている。注意が必要なルートだ。静かな山にも時折強風が吹きそのつど大きな杉の木がうなりを挙げる。恐ろしくなる。それでも夜間のこうして山中を歩くという経験は久しぶりだ。神経が研ぎ澄まされる。
風が吹くと冷える。雨具を上に羽織った。
深夜、多くの人が寝静まった時間にこうして山の中を黙々と歩いている集団がある。興味深い。いろいろな体験ができた。
急坂を登りつめて視界が急に開けたとき、そこに大きな月が重そうに地平線近くに垂れていた。前をあるく人がシルエットになってその月と重なる。空は月明りでうっすらと見える。実に幻想的だ。何と表現してもこうした状況は説明できない。体験したものだけが感じるものだ。
4時くらいになると東の空がうっすら明るくなり山の端がくっきりと見えてくる。遠く里が見渡せるようになったある一瞬だけで見られる光景も素晴らしかった。
明るさが増した4時半ころにCP8に到着。ここは小さなCP.天幕の中にストーブが炊かれていた。その周りの椅子に座った参加者は毛布にくるまり爆睡中。一人が椅子から転げ落ちた。寒い。
残すは7Km.もうすぐゴールだ。制限時間内に到着するためには6時ころには出た方が安心する。我々は5:30にCP8を出発しゴールを目指した。
まず三国山に300mの登り。広い林の中は今回のトレールウォークで600人が歩いて作ったと思われるルートがいくつかあった。その位お広い登りだ。一旦下ってからまた200mの登りで明神山に登る。ここがラストのクライマックスになった。明神山に昇る途中から富士山が顔を見せ始めた。そして頂上につくとドカーンと白い富士山が現れた。何と言うことか圧倒される迫力。山中湖も白い富士山もそして遠く南アルプスまでもが眼前に広がった。これだ、これが今回のつらい苦しい二日間のご褒美た。登っているだれもが興奮している。
それまでの二日間を振り返ってしまう。疲れた、脚も痛かった、いろいろなことに耐えなければならなかった。それでも、歩きとおす、と言う一念で歩き続けた。記念写真を撮った。
おまけのプレゼントも頂いた。それは明神山からの下り。火山性の小石の坂道を転げ落ちるように走って下れた。この二日間、歩き続けた。でも時折走りたい衝動に駆られた。走るのに絶好のルートも多かったからだ。それでも4人のチームで歩く限りは勝手に走るわけにはいかない。その反動で明神山からは一気に駆け下りて後続を待った。楽しかった。実に楽しかった。昨日痛めた右ひざの後ろ側はストレッチのおかげで痛みはなかった。衝撃の少ない坂だったせいか走ることができた。
山中湖に下って途中でサポートしてくれた人と合流し会社のTシャツで揃えてゴ~~~ル。会場には先に到着したチーム、そのサポーターでにぎわっていた。
迎えてくれた方の車で温泉に向かった。富士山が眼前にドーンと広がる温泉に浸かってから帰宅。
来年?また参加したい。ボランティアでもサポーターでもいい。
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